ミニロトで数学しよう
~ 期待値の話 クロニクルズ セカンド・シーズン~

2009年1月13日宝くじ研究家 メールはこのアドレスへお願いします

ある日,裕子さんが「ミニロトの申込カードの裏に書いてある当せん確率 1/169,911 ってどうやって計算したの」とおとうさんに尋ねました。「ああ,それだね。まずミニロトについて説明しよう。ミニロトは全国都道府県及び全指定都市が発売している『数字選択式宝くじ』のことなんだ。1口当たり200円で販売されていて,1~31の数字の中から5つの数字を選んで申込みし,毎週火曜日に発表される6個の数字(本数字5個とボーナス数字1個)との一致具合によって当せんが決まるんだ。備え付けの申込カードに記入して


窓口に提出しお金を支払うと,自分が申し込んだ番号などが書かれた用紙を渡されるんだ」と言いました。


「それで当せん確率 1/169,911 ってどう計算したの」利彦君が言いました。「そんなに急がないで。じゃあまず期待値について説明しよう。期待値というのは平均値のことなんだ。確率の勉強をするときは平均値とは言わずに期待値という言葉を使うのさ」おとうさんが言いました。「何かわかりやすい例を使って説明してほしいわ」裕子さんが言いました。


「それじゃ年末ジャンボ宝くじを例にして説明しよう。年末ジャンボ宝くじは1000万枚を単位として販売されるんだ。この1000万枚のことをユニットと呼ぶんだ。年末ジャンボ宝くじには『ユニット32』などと書いてあるよ。平成20年末の場合,ユニットあたりの当せん金額と本数は次のようになっていたんだ。だから当せん金の合計金額は次のように計算できるよ。

平成20年年末ジャンボ宝くじ(1ユニット=1000万枚あたり)
等級当せん金本数当せん金×本数
1等2億円12億円
1等前後賞5000万円21億円
1等組違い賞10万円99990万円
2等1億円22億円
3等500万円105000万円
4等10万円6006000万円
5等1万円1万1億円
6等3000円10万3億円
7等300円100万3億円
ジャンボ30年感謝賞100万円1001億円
合計金額14億万1990円

期待値=14億1990万円÷1000万枚=141.99円となるね。」おとうさんは言いました。「あら年末ジャンボって一枚300円よね。ずいぶん少ないのね。」裕子さんが言いました。「そうだね。日本ではくじの賞金総額は当せん金付証票法第五条で『発売総額の五割まで』と決められているので仕方がないんだよ。」おとうさんが言いました。

「年末ジャンボ宝くじでは1000万枚のうち1等2億円は1本なので,1等の当たる確率は 1/1000万 となるね。そこで上の表を当せん確率を使って書くと次のようになるんだ。」おとうさんは言いました。

平成20年年末ジャンボ宝くじ
等級当せん金当せん確率当せん金×当せん確率
1等2億円1/1000万20円
1等前後賞5000万円2/1000万10円
1等組違い賞10万円99/1000万0.99円
2等1億円2/1000万20円
3等500万円10/1000万5円
4等10万円600/1000万6円
5等1万円1万/1000万10円
6等3000円10万/1000万30円
7等300円100万/1000万30円
ジャンボ30年感謝賞100万円100/1000万10円
期待値141.99円


「ミニロトの申込カードの裏面には次のように書いてあるね。」おとうさんが言いました。

ミニロトの当せん条件と確率(申込カード裏面より)
等級当せん条件当せん確率見込み当せん金
1等申込数字が本数字5個と全て一致1/169,91110,046,800円
2等申込数字が本数字4個と一致し,
更にボーナス数字1個と一致
5/169,911144,300円
3等申込数字が本数字4個と一致125/169,91110,000円
4等申込数字が本数字3個と一致3250/169,9111000円

当せんは,申込数字が抽せん数字(本数字5個,ボーナス数字1個)と一致している個数で決まります。各等級間での重複当せんは認められません。
各等級の当せん金額は,当せん金総額をあらかじめ決められた一定の配分率に応じて,各等級に分配し,それを各等級ごとの当せん口数で均等に配分することによって定まります。当せん金額は,当せん口数の多少で変動します。

「じゃあ順番に見ていこう。全部で何通りになるかというと31個の数字の中から5個の数字を選ぶので 315 となる。C は高等学校の数学Aで習う記号で『組合せ』のことだ。」おとうさんが言いました。「Cってどう計算するの。」利彦君が言いました。「Cの計算の仕方は自分で調べてほしいのだけれど 315=(31×30×29×28×27)/(5×4×3×2×1)=169911通りとなるね。」おとうさんが言いました。「それで 169911 と書いてあるんだわ」裕子さんが言いました。「じゃあ次に当せんするのは何通りあるか調べよう。第491回の抽選の結果(ミニロト最新の当せん番号案内)によると本数字は 08,10,16,20,23,ボーナス数字は 06 だったんだ。」おとうさんが言いました。※ ロト(過去の当せん番号案内)

「じゃあ1等は『08,10,16,20,23』の1通りだけです。」利彦君がいいました。「そうだね。次に2等を考えよう。」おとうさんが言いました。

「2等は次の5通りです。」裕子さんが言いました。
06,10,16,20,23
08,06,16,20,23
08,10,06,20,23
08,10,16,06,23
08,10,16,20,06

「そのとおり。つまり5個の本数字の中から4個を選んで,残りの1個はボーナス数字にすれば良いので 54=(5×4×3×2)/(4×3×2×1)=5 で計算できるね。」おとうさんが言いました。

「3等はどう考えればいいんだろ。分からないな」利彦君が言いました。「そうだね。3等からは少し難しくなるね。3等は5個の本数字の中から4個を選択し(つまり 54 ),さらに1~31の31個の数字から6個の数字(本数字5個とボーナス数字1個)を引き算した残りの25個の数字の中から1個を選択すれば良いので(つまり 251 )次のように計算できます。」おとうさんが言いました。

54×251=5×25=125通り

「じゃあ4等はどうなるのかしら」裕子さんが言いました。「考え方が少し違ってくるんだ。4等は5個の本数字の中から3個を選択し(つまり 53 ),さらに1~31の31個の数字から本数字5個を引き算した残りの26個の数字の中から2個を選択すれば良いので(つまり 262 )次のように計算できます。」おとうさんが言いました。

53×262=(5×4×3)/(3×2×1)×(26×25)/(2×1)=10×325=3250通り

「そうか。じゃあミニロトの期待値を計算してみよう。」利彦君が計算しました。

ミニロトの期待値
等級当せん確率見込み当せん金当せん確率×当せん金
1等1/169,91110,046,800円約 59.1円
2等5/169,911144,300円約 4.2円
3等125/169,91110,000円約 7.4円
4等3250/169,9111000円約 19.1円
期待値約 89.8円

「あら,賞金額は発売額の約 44.9%(=89.8円÷200円)しかないのね。」裕子さんが言いました。「そうだね,でも1口の値段が安いので購入する人がたくさんいるんだ。高額な賞金を手にする確率はゼロではないけれど,期待値を計算する限りではけっして割の良い賭けとは言えないんだ。『数学なんか勉強しても,役には立たない』と思っている人は貧乏くじを引いて損をする確率が高いんだよ。」おとうさんは言いました。

「物事の本質を見抜き,上級国民のカモカモエヴリバディにされないように,ちゃんと数学を勉強しなければダメだね」利彦君と裕子さんは思いました。


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